世界を量ることについての八つのこと

DC·95 Deep Cuts
130年のあいだ、キログラムは一つの金属の塊だった

130年のあいだ、キログラムは一つの金属の塊だった

2019年まで、キログラムは定義ではなく一つの物体だった。プラチナとイリジウムでできた光る円柱で、大きさはプラムほど。パリ近郊の金庫に、入れ子になった三重のガラスの覆いの下で保管されていた。地球上のほかのすべてのキログラムは、つまるところその複製にすぎなかった。やっかいだったのは、その質量が誰にも完全には説明できないごくわずかな量だけ変化していくことだ。そこで世界は、変わることのない物理定数を基準にキログラムを定義し直し、あの小さな金属の塊をひっそりと引退させた。
彼は二つの鉛の球で地球全体を量った

彼は二つの鉛の球で地球全体を量った

1798年、ヘンリー・キャヴェンディッシュは小屋から一歩も出ずに地球を量った。細い針金から、両端に小さな鉛の球を付けた細長い棒を吊るし、そこへ二つの巨大な鉛の球を近づけた。その弱い重力が針金を髪の毛ほどねじり、そのねじれから彼は重力そのものの強さを測り、ひいては地球全体の密度と質量を割り出した。その値は今日使われている数字の約1パーセント以内に収まっていた。およそ六十垓トンである。
小さな分銅一つで、穀物の袋まるごとを量れる

小さな分銅一つで、穀物の袋まるごとを量れる

ローマ時代から使われてきた竿秤(さおばかり)は、てんびんのからくりを出し抜く。荷物を同じだけの分銅の山と釣り合わせる代わりに、荷物を短い腕に掛け、長い目盛り付きの腕に沿って滑る小さな分銅一つで釣り合わせる。十分に遠くまで滑らせれば、握りこぶしほどの分銅でも小麦粉の袋と釣り合う。てこの働きがその力を何倍にも伸ばすからだ。商人は分銅をたった一つだけ持ち歩き、目盛りの刻まれた竿のどこで止まったかで荷の重さを読み取った。
この秤では、分銅をどこに置くかは関係ない

この秤では、分銅をどこに置くかは関係ない

店先の秤の皿のいちばん端に分銅を載せても、ど真ん中に載せても、目盛りはまったく同じを指す。そんなはずはない、と感じるのに、だ。これは1669年に考案されたロベルバル機構の仕掛けである。二つの皿の下には、連結された平行四辺形の梁(はり)が隠れていて、皿を水平に保ち、中心からずれた荷重による傾きを打ち消し、まっすぐ下向きの力だけを残す。この直感に反する設計のおかげで皿は上に載せられ、食料品店の秤は何世紀ものあいだ、あれほど簡単に使えたのだ。
てんびんは月でも正しく働くが、ばね秤は嘘をつく

てんびんは月でも正しく働くが、ばね秤は嘘をつく

二皿のてんびんとばね秤は同じ仕事をしているように見えるが、測っているものは違う。てんびんは物体を既知の分銅と競わせる。重力が両側を等しく引くので、どこでも本当の質量を示す。月の上でも同じ数字を出すだろう。一方、ばね秤が測るのは引く力、つまり重力がばねをどれだけ強く伸ばすかだ。重力が地球の六分の一しかない月へ持っていけば、まったく同じ物体がわずか六分の一の重さしか示さない。
弾丸の単位は、一粒の大麦から始まった

弾丸の単位は、一粒の大麦から始まった

ヤード・ポンド法でいちばん小さい伝統的な重さの単位はグレーンで、かつてはまさにその名のとおり、穂の真ん中から取った大麦一粒の重さを意味した。日用品にも、貴金属にも、薬屋の薬にも共通して使われた唯一の単位である。ごく小さいのに、完全には消えなかった。弾薬はいまもグレーンで表され、「115グレーン」と書かれた箱はその弾丸を指す。昔のアスピリンの用量も同じように数えられていた。
パン屋が13個くれたのは、罰を逃れるためだった

パン屋が13個くれたのは、罰を逃れるためだった

ベーカーズ・ダースが13なのは、中世の重さに関する法律のせいだ。1266年から、イングランドのパン屋はパンを厳密な重さで売らねばならず、目方の足りないパンは罰金や、さらし台や、もっとひどい罰を意味した。だがパンは気まぐれで、膨らみ方も水分も一つひとつ違う。だから正直なパン屋でも、そのつもりがなくても目方が足りなくなることがあった。法定の重さを確実に上回るために、彼らは12個ごとに13個目を付け足した。気前のよさではなく、法への用心が、あの一つ多いパンを生んだのだ。
この秤は、鉛筆の点ひとつの重さを感じ取る

この秤は、鉛筆の点ひとつの重さを感じ取る

実験室の分析天びんはきわめて敏感で、1万分の1グラムまで読み取る。鉛筆の跡や、指紋の脂、手が皿に残したわずかな湿り気さえ感知できるほどだ。その水準では、あなたの息は突風であり、体温は炉である。だから皿は、引き戸の付いた小さなガラスの覆いの中に密閉して置かれる。空気の流れがおさまり、大気が静まるのを待ってようやく、最後の桁が揺れるのをやめ、表示が定まる。
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