マングローブは落ちる前に苗を芽吹かせる マングローブは種子の段階をまるごと飛ばす。眠ったままの種を水没した泥に落とす代わりに、親木は枝の上で胚を育て、プロパギュール(胎生種子)と呼ばれる細長い鉛筆のような苗にする。長さが1フィートを超えるものもある。ついに離れると、先端から泥に突き刺さって数時間で根づくこともあれば、遠くまで流れていって離れた場所に定着することもある。木を離れる前から、すでに生きて育つ若い苗木なのだ。
一部のマングローブは泥の上に出た根で呼吸する 水浸しの干潟の泥にはほとんど酸素がないため、一部のマングローブはその上に肺を伸ばす。気根(呼吸根、ニューマトフォア)と呼ばれる鉛筆のような根が泥からまっすぐ上へ突き出し、一本の木の周りに数千本も並ぶことがある。その表面には皮目(レンチセル)と呼ばれる小さな孔が点々とある。干潮時には孔から空気が入り込み、海綿状の内部組織を通って埋まった根まで届く。満潮になると孔はぴたりと閉じ、海水の侵入を防ぐ。
マングローブの葉は塩の結晶を汗のように出せる 一部のマングローブは海水を飲み、その塩をただ汗のように出してしまう。ハイイロマングローブのような種は、葉に特化した塩類腺をもち、ナトリウムと塩素を表面まで汲み上げる。そこで水分が蒸発し、実際に舐めて味がわかるほどの小さな白い結晶が残る。一枚の葉がそれで覆い尽くされることもある。これは、1リットルあたり約35グラムの塩を含む海水の中でこれらの木が生き抜くための、いくつもの技のひとつだ。
アカマングローブの根は海水から塩をろ過する アカマングローブは、水が入る前から塩を処理する。その根は防水性のコルク質の壁に覆われ、逆浸透膜のフィルターのように働く。木が水を吸い上げると、膜は海水の塩の90パーセント以上を根の表面でせき止め、幹に上っていくのはほとんど真水になる。すり抜けたわずかな塩は老いた葉へ送られ、木はその葉を落としてしまう。
マングローブは熱帯雨林より多くの炭素を埋める 面積あたりで見ると、マングローブは地球で最も優れた炭素の金庫のひとつであり、その大半は木材にあるのではない。根が閉じ込めた、酸素の乏しい深い泥の中に蓄えられている。そこでは落ちた葉や茎がほとんど腐らず、炭素は何世紀も埋もれたままになる。アマゾンのマングローブは1ヘクタールあたりおよそ511トンの炭素を蓄え、これはすぐ内陸にある炭素豊富で名高い熱帯雨林の約2倍にあたる。そして、その最大4分の3は水面下に隠れている。
「マングローブ」は1種ではなく無縁の70種 マングローブは家系図というより職務内容書のようなものだ。約70種の「真のマングローブ」は同じ見た目と同じ耐塩の技を共有するが、互いにまったく近縁でない約16の植物科に由来する。支柱根、塩の制御、生きたまま生まれる苗という「マングローブ流の生き方」は、独立に十回以上も進化してきた。ヤシとエンドウほど異なる植物が、水没した塩辛い海の縁に対してまったく同じ答えにたどり着いたのだ。
世界最大のマングローブ林には泳ぐトラがいる 世界最大のマングローブ林スンダルバンスは、インドとバングラデシュにまたがる約1万平方キロメートルの河川デルタに広がり、潮の通る水路によって数百の島々に分かれている。そこのベンガルトラは適応のために半水生になり、汽水の迷路でシカや魚、カニを狩るため、島から島へ一度に数キロメートルも泳ぐ。これほど進んで、これほど頻繁に水に入るトラは、ほかの場所にはほとんどいない。
マングローブの根の帯は波を飲み込める マングローブは生きた防潮堤だ。波が弓なりの根と幹の密集した茂みを押し通るとき、その絡み合いが動く水を強く引きずり、エネルギーを奪っていく。幅わずか100メートルのマングローブの帯でも波高を13〜66パーセント下げられ、1キロメートルの林は高潮を数十センチメートル削ることができる。マングローブを失った海岸は、サイクロンがついに上陸したとき、はるかにひどく浸水する。