自前の赤い日焼け止めを分泌する カバは一日の大半を半分水に浸かって過ごすが、陸に上がった瞬間から皮膚は粘りけのある油状の液体をにじませ始め、数分で赤く、やがて茶色に変わる。昔の観察者はこれを「血の汗」と呼んだが、血でも汗でもない。この分泌物には、日焼け止めのように紫外線を吸収し、さらに細菌を殺す二種類の色素が含まれていて、本物の汗腺を持たず争いで絶えず傷つく皮膚を守っている。この動物は必要に応じて自前のローションを作り出すのだ。
水辺の巨獣は実は泳げない 川に暮らす動物でありながら、カバには意外な秘密がある。泳がないのだ。体が密で重すぎて浮かないため、代わりに歩き、小走りし、川底を蹴って長くゆっくりとした跳躍で進み、まるで川底を駆けるようにして跳躍の合間に息継ぎをする。映像では、深い水の中をふわりと軽やかな足取りで進み、つま先がかろうじて底に触れる様子が見られる。水中で彼らは泳ぎ手ではなく、走り手なのだ。
最も近い親戚はクジラ カバは巨大なブタのように見えるが、現生で最も近い親戚はブタではまったくない。クジラとイルカだ。この二つの系統は5000万年以上前に生きていた共通の祖先を持ち、その後一方の枝が再び水へと歩み入り、やがて完全な水生動物になった。カバとクジラには今も共通の手がかりが残っている。毛のない皮膚、水中で授乳し合図を送る能力、そして本物の陸生哺乳類には見られない特殊な腺だ。
眠ったまま浮かび上がって呼吸する カバは水中で完全に休むことができ、しかも一度も目を覚まさずに呼吸を続ける。数分ごとに体が自動的に水面へ浮かび上がり、沈むときにぴたりと閉じる鼻孔で一息吸い、また沈んでいく。その間ずっと眠ったままだ。この反射はとても深く組み込まれていて、生まれたばかりの子も行う。カバは約5分間息を止められ、夜どおし自動操縦のように浮かび上がってくる。
あの大あくびは威嚇で、伸びではない カバが頭をのけぞらせ、口を大きなピンクの洞窟のように開くとき、それは眠いからではない。この大口は警告で、小舟を裂けるほどの武器を見せつけているのだ。カバは顎を150度近くまで開くことができ、下の犬歯は生涯伸び続けて約半メートルに達し、上下の歯が擦れ合うことでかみそりのように鋭く保たれる。口を大きく開けるほど、威嚇は大きい。
体の大きさのわりに驚くほど少食 カバは1.5トンを超える体重になることもあるのに、食べる量は驚くほど少ない。毎晩水を離れ、ときには数キロ離れた草地まで歩いていき、幅広い唇で草を食み、わずか35〜40キログラムほど、体重のおよそ1〜1.5パーセントしか摂らない。同じくらいの大きさの陸生草食動物の多くははるかに多く食べる。その秘訣は、水中でのんびり浮かんで過ごす一日にあり、エネルギーをほとんど使わないので軽い食事で足りるのだ。
目と耳と鼻が一直線に並ぶ 水面のカバを見ると、見えるのは三つだけだ。目、耳、鼻孔——どれも頭のいちばん上、同じ高さに並んでいる。この造りはわざとだ。巨大な体の残りを水中に隠したまま、カバは見て、聞いて、呼吸でき、ほとんど完全に水中に潜んでいられる。まるで生きた潜望鏡だ。潜るときには耳がたたまれ、鼻孔がひと続きの動きで閉じる。
この3トンの走り手はまったく跳べない カバは1.5トンをゆうに超える体重になることもあるのに、陸上では時速約30キロメートルで突進でき、たいていの人が全力で走るより速い。難点は、脚が短く体が巨大なため、物理的に跳べないことだ。四本の足が同時に地面を離れることは決してない。障害物を越えるには、よじ登るか押し通るしかない。疾走するカバは、地面に縛られた純粋な勢いそのものだ。