海でいちばん奇妙な風船についての8つのこと

DC·203 Deep Cuts
小さな魚が海底に完璧な円を刻む

小さな魚が海底に完璧な円を刻む

長年、南日本の海に潜るダイバーたちは、砂に刻まれた2メートルの幾何学模様を見つけては、説明がつかずにいた。その作者は、体長わずか10センチほどのオスのフグだった。一週間以上も海底でひれを動かし続け、放射状に伸びる尾根と谷を耕して、メスを誘うための非の打ちどころのない円形の迷路を作り上げ、貝殻で飾りつけさえする。この形は細かい砂を中心へと集める働きもあり、そこに卵が産みつけられる。
空気ではなく水を飲み込んでふくらむ

空気ではなく水を飲み込んでふくらむ

おびえたフグが飲み込むのは空気ではなく水だ。きわめて伸縮性に富んだ胃に水を送り込む。その胃壁はコラーゲン繊維でひだ状になっていて、伸びては元に戻ることができる。邪魔をする肋骨がないため、この魚は数秒で体を三倍から四倍にもふくらませ、飲み込むには大きすぎる球体になる。その形を保つのは重労働で、安静時の最大五倍もの酸素を消費する。
あの有名な毒は、フグ自身が作るのではない

あの有名な毒は、フグ自身が作るのではない

フグの猛毒テトロドトキシンは、重さあたりで青酸カリよりはるかに強力だが、この毒を作っているのは魚自身ではまったくない。食物連鎖の中の細菌が作り出し、それが魚の臓器、とりわけ肝臓と卵巣に少しずつ蓄えられていく。その証拠は養殖から得られた。清潔で管理された餌で育てられたフグは、ほとんど毒を持たずに成長するのだ。危険は、生まれつきのものではなく、献立から借りてきたものなのである。
四本の歯が融合した、伸び続けるくちばし

四本の歯が融合した、伸び続けるくちばし

ある名前が、彼らの口の中に隠れている。この仲間の学名は「四本の歯」を意味するのだ。四枚の歯の板が融合して、オウムのように硬く、伸び続けるくちばしになっている。伸びすぎないように、フグは二枚貝や巻貝、サンゴといった硬い獲物をたえずすりつぶし、伸びる速さに負けないようにくちばしをすり減らさなければならない。げっ歯類の前歯を一定に保つのと同じ仕組みである。
とげは、息をひそめた鱗だ

とげは、息をひそめた鱗だ

ふくらんだフグから逆立つとげは、別個の武器ではない。進化の過程でとげへと作り変えられた、その鱗なのだ。フグがくつろいでいるときには体にぴたりと寝そべり、ほとんど見えない。水を飲み込んでふくらんだときにだけ起き上がり、柔らかな小魚を、ほとんど何ものも噛みつけないとげだらけの球に変える。大きくふくらむほど、その鎧は鋭くなる。
目を閉じられる唯一の硬骨魚

目を閉じられる唯一の硬骨魚

ほとんどの魚は目を閉じられない。まぶたがないからだ。硬骨魚の中でフグの仲間だけが唯一の例外である。眼球を眼窩の奥へと引き込み、最大で70パーセントも引っ込めながら、その周りの皮膚が縮む虹彩のように内側へすぼまって、ついには目をふさいでしまう。これは硬骨魚の世界のどこにも見られない、まばたきなのだ。
尾びれを休ませ、ヘリコプターのように空中停止する

尾びれを休ませ、ヘリコプターのように空中停止する

フグの泳ぎ方は、ふつうの魚とはまるで違う。尾を振る代わりに、波打つ胸びれ・背びれ・尻びれで水をかき、その場で空中停止し、細やかに向きを変える。尾はたいてい後ろに引かれて舵の役を果たし、危険からとっさに逃げ出すときだけ働く。尾で進む巡航を捨てた代償が、ヘリコプターのような見事な機動性なのだ。
最も小さい種は、えんどう豆のさやほどにしかならない

最も小さい種は、えんどう豆のさやほどにしかならない

フグがみな風船のようになるわけではない。インド南西部の淡水の川にすむアベニーパファー(豆フグ)は、せいぜい2.5センチほど、約1インチにしかならず、地球上で最も小さいフグの一つだ。緑がかった黄色で、わき腹には暗く玉虫色に光る斑点があり、はるかに大きな親戚たちと同じくちばしと、飛び出してぐるぐる動く目を持つ、ミニチュアながら一人前のフグである。
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