海綿をふるいに押し通しても、また組み立て直す 1907年、ある生物学者が生きた海綿を細かい布に押し通し、ばらばらの細胞が漂う濁ったスープにした。細胞は死ななかった。何時間も何日もかけて皿の上を這い回り、互いを見つけ、寄り集まり、ゆっくりと小さな働く海綿へと自らを作り直した。一つ一つの細胞にまで分解されてから、このように自分を組み立て直せる動物はほかにいない。この結果は、海綿の細胞が仲間を認識し、体全体を一から作り直す指示を持っていることを示した。
1キロの海綿は1日に2万4千リットルをろ過する 海綿は本質的に生きたポンプだ。その体は無数の小さな細胞で覆われ、それらの打ち振るう鞭毛が数えきれない小孔から海水を吸い込み、細菌や食べ物のかけらをこし取り、上部の大きな開口部から水を押し出す。これほど単純な生き物にしては、その流量は驚くほどだ。体重1キロの海綿は1日に最大2万4千リットルの海水を体内に通すことができ、十分な餌を集めるためだけに自分の体積の何倍もの水を循環させている。
海綿はとてもゆっくりとくしゃみをする 海綿には鼻がないが、それでもくしゃみをする。取り入れ用の小孔が砂粒で詰まると、粘液をにじみ出させて掃除する。微速度撮影では、海綿が粘ついてごみを含んだ粘液を、自らの水流に逆らってゆっくり外へ押し出し、やがて表面を穏やかに収縮させて吐き出す様子が映された。一回のくしゃみは一瞬ではなく、20分から50分かけて進む。吐き出された粘液も無駄にはならない。魚やほかのサンゴ礁の動物が、その粘っこい糸を餌として食べるのだ。
あなたのへちまは海の生き物ではなかった 天然の浴用海綿は確かに動物だが、多くの浴室にあるごわごわしたへちまはそうではない。へちまは野菜だ。それはキュウリやウリの仲間であるつる植物、ヘチマの実を乾かした内側の骨格にあたる。若いうちに採れば、その実はズッキーニのように食べられる。つるにつけたまま熟させて乾かすと、果肉が落ちて、私たちがこすり洗いに使う丈夫な網目状の繊維だけが残る。つまり、ありふれた浴室の海綿の一方は動物で、もう一方は乾いた畑のウリなのだ。
一部のサンゴ礁の海綿はローマより古い カリブ海のオオカイメン(巨大な樽形海綿)は、人が中に入れるほど大きな樽へと育ち、しかも極めてゆっくり成長する。ダイバーたちはそれを「サンゴ礁のセコイア」と呼んだ。個体が年ごとにどれほど少しずつ広がるかを測ることで、科学者たちは、知られている最古の個体が約2,300年もサンゴ礁にとどまっていたと見積もった。つまり、それはローマ帝国より前に生まれたことになる。こうした古代の海綿は、わずか1、2センチから始まり、何世紀ものあいだただ伸び続けるのだ。
脳も神経も筋肉もない動物 海綿は動物の系統樹のまさに根もとあたりに位置し、私たちが動物らしいと考える仕組みをほとんど何も持たずにやっていく。脳も神経も筋肉も腸もなく、本当の意味での組織さえないのに、まぎれもなく動物だ。餌をとり、成長し、周囲に反応するのは、ひとえに細胞が隣の細胞へ化学的に信号を送ることによる。最近、生物学者は、海綿のろ過を調整するために長い腕を伸ばす細胞さえ見つけた。神経系がどのように始まったのかを、かすかに思わせる存在だ。
天然の浴用海綿は骨格そのもの 浴用に売られている柔らかな天然海綿は、かつて海底に生きていた動物の残された骨格だ。生きた海綿は、スポンジンと呼ばれるコラーゲン質のたんぱく質でできた弾力のある網目を骨組みとして作られている。採取者は海綿を切り取り、生きた肉が腐って洗い流されるまで水に浸し、あとには清潔で吸水性のあるその繊維の骨組みだけが残る。つまり、あなたが握りしめる天然の浴用海綿はどれも、かつての動物のむき出しの足場であり、私たち自身の肌に伸びを与えるのと同じ仲間のたんぱく質でできているのだ。
海綿の3分の1が微生物のこともある 海綿は一匹の生き物というより、混み合った都市に近い。多くの種は細菌などの微生物でいっぱいで、種によっては動物全体の重さの3分の1にも達し、その密度は周りの海水よりはるかに高い。一つの海綿が、その組織の中に数十もの異なる微生物のグループをかくまっていることもある。こうした住人たちはきちんと役目を果たす。栄養の処理を助け、強力な化学物質を作り出して、柔らかく根を張った海綿を、通りかかる魚に食べられないよう守るのだ。