6,000本のとげは、ただの硬い毛 ハリネズミの鎧は毛だ。約5,000〜7,000本のとげはどれも、爪と同じタンパク質ケラチンが変化した毛で、中が空洞で硬くなっている。根元の柔らかい球状の組織で支えられ、圧力がかかると折れずにしなる。ヤマアラシの針と違ってとげに返しはなく、触れても抜けない。
がま口のようにキュッと閉じる とげのある皮膚は、背中にゆるく掛かった外套(マント)だ。広い筋肉の膜がそのマントを柔らかい部分の上に引き下ろし、縁を取り囲む厚い筋肉の帯(眼輪筋にあたる)が巾着のひものように締まって、全体を密封したボールにする。完全に丸まると、とげで守られていない隙間はわずか1センチほどしか残らない。
泡を立て、自分の唾液を塗りたくる 強く新しいにおいに出会うと、ハリネズミは奇妙なことをする。においの元をなめたり噛んだりして泡状の唾液を作り、頭を肩越しにぐいと後ろへひねって、舌で自分のとげに泡を塗りつける。何分ものあいだ体をよじり、まわりにほとんど無頓着になる。なぜそうするのかはいまだ議論中で、借り物の毒、においの偽装、あるいは一種のマーキングだとも言われる。
その血はクサリヘビの毒を無力化する ハリネズミはクサリヘビの巣を襲い、同じくらいの大きさの動物なら死ぬような咬みつきも平然とやり過ごす。その血には「エリナシン」というタンパク質があり、毒の組織を破壊する酵素に結びついて働きを止めてしまう。しかも他の大陸のヘビの毒にも効く。とはいえ盾は万全ではなく、量が十分多ければハリネズミも死ぬことがある。
ミルク一皿が命取りになる 訪ねてきたハリネズミにミルクを出してやる、あの優しい昔ながらの習慣は命取りだ。ハリネズミは乳糖不耐症で、乳の糖を分解する酵素を腸に持たない。だから牛乳は発酵し、ひどい、しばしば致命的な下痢を引き起こす。浅い皿のただの水と肉の入った餌なら歓迎される。だが絵本のイメージに反して、ミルクは決して歓迎されない。
冬には心臓がほぼ止まる 冬眠中のハリネズミは、ただ眠っているのではなく、機能を落としている。体温は約35度から周囲の冷たい空気に合わせて下がり、時には2度まで落ちる。心拍は毎分280回もの速さから20回未満にまで遅くなる。数週間ごとに蓄えた脂肪を少しだけ燃やして体を温め、そしてまたすぐ休眠へと沈んでいく。
赤ちゃんは母を傷つけないよう、とげを隠して生まれる 生まれたばかりのハリネズミは毛がないように見えるが、最初の100本ほどの白いとげはすでにそこにある。出産時に母を傷つけないよう、液体を含んだ皮膚の層の下に収まっているのだ。数時間のうちにそのむくみが引き、皮膚が縮んで、柔らかく淡いとげが表面に押し出てくる。より硬く色の濃いとげは、その後の数日かけて生えてくる。
郷愁で海を渡り、今や脅威に 入植者たちは1870年代から、故郷を思い出させる慰めとして、また庭のナメクジを食べさせるために、ハリネズミをニュージーランドへ送り込んだ。天敵がいないため数百万匹に増え、ほかのどこにもいない野生生物に牙をむいた。地上で巣を作る鳥の卵やひな、ウェタのような珍しい昆虫を食べてしまうのだ。今では正式に有害動物(害獣)に分類されている。