この曲線は固まった砂丘だ 砂岩の崖を走る大きな弧は装飾ではなく、古代の砂丘が埋もれた姿だ。砂漠の風が砂丘を前へ押し進めるとき、砂は風下の斜面を傾いた層となって滑り落ちた。その層が埋もれて固まると、傾きは斜交層理として残る。最も有名な砂岩の一部は、地球がこれまでに知る最大の砂漠で約1億9000万年前に堆積した。
アーチを削ったのは風ではなく氷だ 石のアーチは、人がよく思うように風の砂で崖から削り出されるのではない。はるか下では、埋もれた塩の層がゆっくりと座屈し、上の砂岩を平行な壁、つまりフィンへと割った。やがて割れ目に染み込んだ水が凍り、約9パーセント膨張して岩を一粒ずつこじ開け、一方で雨に含まれる弱い酸が砂を固める天然のセメントを溶かし、ついに穴が開いて広がっていった。
突然の洪水が削り出した渓谷まるごと スロットキャニオンは家の高さより深いのに、両側の壁に同時に触れられるほど狭いこともあり、ゆっくりした細い流れではなく、鉄砲水によって短時間で削られた。砂漠の雨は硬い砂岩に染み込めないため、砂と水の渦巻く泥流となって割れ目に流れ込み、液体の紙やすりのように削り取る。深さが100フィートをゆうに超えるのに、幅はわずか数フィートというものもある。
あの巨大な赤い岩は、実は灰色だ ウルルの有名な赤は、ごく表面だけのものだ。この岩は鉄を含む鉱物がぎっしり詰まった砂岩、アルコースで、割れたばかりの面を見ると内部は実は灰色だ。外気にさらされると鉄がゆっくりと錆び、表面を燃えるような赤褐色に染める。そして平原の上に見えているのは先端にすぎず、この岩塊は地下へまっすぐ約2.5キロメートルも続くと考えられている。
塩が石を蜂の巣状に食い荒らす 砂岩の壁にできた、あばた状の蜂の巣のような見た目は塩のしわざだ。塩水が岩の孔に染み込み、乾くと塩が結晶化して驚くほどの力で外へ押し広げる。狭い孔では圧力が100メガパスカルを超えることもあり、柔らかい石が耐えられる限界をはるかに上回る。一粒ずつ空洞が広がり、薄い壁で隔てられた小さなくぼみの格子が残る。
埋もれたスポンジが内陸の海を抱える 砂岩は粒と粒のあいだに無数の小さなすき間があり、石のスポンジのように水を飲み込んで蓄える。だからこそ世界有数の地下貯水池になる。オーストラリア東部の地下では、砂岩の層が地球最大の鑽井盆地をつくり、約170万平方キロメートルに広がって、推定6万4900立方キロメートルもの古い水を自らの圧力のもとに蓄えている。
微生物が岩を黒く塗る、1ミクロンずつ 砂漠の砂岩の岩塊を覆う光沢のある黒褐色の皮膜は砂漠ワニス。マンガンと鉄の酸化物が粘土と結びついた、紙のように薄い釉だ。岩の上にすむ微生物がその形成を助けているらしく、残していくマンガンを濃縮する。その形成は身もだえするほど遅く、千年でわずか1〜40マイクロメートル、人の一生をかけても紙一枚の厚みにも満たない。
鋼の街を研ぎ上げた石 粗い砂岩の一種ミルストーン・グリットは、硬い石英の粒がびっしり詰まっていて鋼に食い込む。回転する砥石に削り出し、濡らしたまま使えば、ナイフや針や刃を研ぎ上げ、シェフィールドを刃物の街にした。このグリット自体は約3億2000万年前、石炭紀の川のデルタに堆積したもので、太古の砂州がある産業の砥石として生まれ変わった。