透けて見える薄い層にはがれる 雲母は積み重なった層でできていて、その結びつきがとても弱いため、爪で紙より薄い、数千分の1ミリほどの薄片にはがせるのに、透明で弾力があり丈夫なままだ。1つの結晶を何度も割って数百枚の透明なかけらにでき、どれも割れずに曲がるほどしなやかだ。このきれいな割れ方を完全劈開という。
ガラスが安くなる前は窓ガラスだった 透明な窓ガラスが手頃になるずっと前、人々は雲母で窓をはめていた。ロシアで結晶から割り出した大きな平らな板が窓として広く使われたため、この鉱物はモスクワ一帯の古名ムスコビーにちなんで白雲母(マスコバイト)と呼ばれるようになった。ロシア、インド、ヨーロッパの一部では、家や教会がガラスの代わりに薄い石の板から光を取り入れていた。
古いストーブの扉の小窓はこれ 雲母は普通のガラスを砕くほどの熱を平気でしのぎ、500〜1000度を超えても透明なまま、急な温度変化にもひび割れずに耐える。そのため、薪や石炭ストーブの扉、ランタン、炉の覗き窓の定番の透明な窓となり、炎を安全に眺められた。古いカタログはこの薄い琥珀色の板をアイシングラスと呼んだ。
化粧品のきらめきは粉にした石 アイシャドウや口紅、車のメタリック塗装の真珠のような輝きは、たいてい細かなかけらにすりつぶした雲母から生まれる。各かけらは透明な小さな鏡で、二酸化チタンの薄い膜をまとうと光を分けて跳ね返すため、動くと色が移ろいきらめいて見える。それは染料などではなく、光をもてあそべるほど薄く削った石にすぎない。
初期のラジオをひそかに絶縁していた 雲母は電気を見事に遮りながら高熱にも耐えるので、技術者は初期のラジオを同調させる小さなコンデンサーや、真空管内部の絶縁スペーサーに組み込んだ。わずか数分の1ミリの板が数千ボルトを食い止められる。二度の世界大戦を通じてこれは戦略鉱物であり、ほぼすべての無線・通信機器に欠かせなかった。
巨大な石の「本」となって育つ 雲母の結晶は薄い層が積み重なって育ち、地質学者は実際にそれを「本」と呼ぶ。ページそっくりに見えるからだ。ペグマタイトという粗い岩の中では巨大に膨れ上がる。記録上最大の雲母の単結晶はオンタリオで見つかり、長さ約10メートル、重さは330トン近く、持ち上げるどころか開くこともできない本だ。
ある雲母を熱するとポップコーンのように膨らむ ヴァーミキュライトと呼ばれるある雲母は、層の間に水を閉じ込めている。急いで熱するとその水が一気に蒸気になり、層を押し広げるので、かけらはアコーディオンのように広がり、元の20〜30倍にも膨らむ。あとに残る淡い金色の虫のような巻き毛が、園芸家が培養土に混ぜ、建築家が断熱材として詰めるものだ。
この藤色の雲母は電池の金属のために採掘される 鱗雲母(レピドライト)と呼ばれる桃紫色の雲母は、充電池の心臓部の金属であるリチウムを取るために採掘する主要鉱物の一つで、おまけに希少金属のルビジウムとセシウムも産する。とはいえ、その美しい藤色はリチウムとは無関係で、その色合いは結晶に織り込まれたわずかなマンガンの痕跡から来ている。