魔法としか思えない、磁石がやってのける八つのこと

DC·63 Deep Cuts
磁石が近づくと、この液体はトゲを生やす

磁石が近づくと、この液体はトゲを生やす

フェロフルードは、鉄分を多く含む直径10ナノメートルほどのナノ粒子を油の中に分散させた液体だ。磁石を近づけると、鋭い山が立ち並ぶ場へと逆立つ。トゲが生じるのは、液体が磁力線に沿おうとする一方で重力と表面張力がそれに抗うためで、やがて正常磁場不安定性と呼ばれるパターンに落ち着く。これは1967年に初めて説明された。
磁石が銅の中をスローモーションで落ちていく

磁石が銅の中をスローモーションで落ちていく

強い磁石を銅の管に落とすと、銅は磁性体ではないのに、まるで蜂蜜の中を進むようにゆっくりと降りていく。落ちる磁石は、銅の中に渦電流と呼ばれる渦巻く電流を誘導する。レンツの法則により、この電流は落下に逆らう自前の磁場を生み出す。空気中なら半秒もかからず通り抜ける一メートルの銅管を、強い磁石は数秒かけて沈んでいくことがある。同じ効果が、列車に触れることなくブレーキをかけている。
磁石を真っ赤に熱すると、自分が何だったか忘れてしまう

磁石を真っ赤に熱すると、自分が何だったか忘れてしまう

磁性体にはどれもキュリー点があり、その温度を超えると磁性を完全に失う。鉄ではその境目が770度(摂氏)だ。熱は原子をすさまじいエネルギーで叩きつけ、揃っていた磁区を混沌へと崩してしまうため、金属はもはや磁場を保てなくなる。冷ませば、また磁化できる。1895年にこれを研究したピエール・キュリーにちなんで名づけられた。
冷やした円盤が、磁石を宙に凍りつかせる

冷やした円盤が、磁石を宙に凍りつかせる

ある種の物質を臨界温度以下まで冷やすと超伝導体になり、マイスナー効果と呼ばれる現象で磁場を締め出す。その上に置かれた磁石は、ピンで留められたかのように宙に浮いたまま動かない。一部のセラミック超伝導体は摂氏マイナス180度ほどでこれを実現し、液体窒素で到達できるため、浮かぶ磁石は実験室の目を引く光景となっている。
磁石を折ると、どのかけらもまた二つの極を持つ

磁石を折ると、どのかけらもまた二つの極を持つ

棒磁石を半分に切って北極だけを取り出そうとしても、毎回うまくいかない。どのかけらにも、たちまち独自の北極と南極ができる。原子一つになるまで切り続けてもこの法則は崩れない。磁性は、磁区と呼ばれる無数の小さな整列した領域から生まれ、その一つ一つが完全な磁石だからだ。ポール・ディラックは1931年に単独の磁極、すなわちモノポールの存在を予言したが、長年の探索にもかかわらず、いまだ一つも見つかっていない。
地球の極は、これまでに何百回も入れ替わってきた

地球の極は、これまでに何百回も入れ替わってきた

地球の磁場は固定されていない。外核で渦巻く溶けた鉄に駆り立てられ、地質時代を通じて何百回も完全に極性を反転させ、北と南が入れ替わってきた。直近の完全な反転であるブルン・マツヤマ反転は、およそ78万年前に起きた。その記録は火山岩の中に凍りついており、鉱物が冷えるときに磁場の向きを閉じ込める。
ある死んだ星の磁気は、あなたの細胞を消し去ってしまう

ある死んだ星の磁気は、あなたの細胞を消し去ってしまう

マグネターは爆発した星の崩壊した中心核で、宇宙で知られるなかで最も強力な磁場を、最大で1000億テスラまでまとっている。1000キロメートル離れていても、そんな磁場は生体組織の原子を引き裂いてしまう。比べれば、冷蔵庫の磁石はおよそ0.01テスラだ。私たちの銀河の数十億の星のなかで、これまでに確認されたマグネターはほんの数十個にすぎない。
病院のスキャナーは、地球の磁気をはるかに凌ぐ

病院のスキャナーは、地球の磁気をはるかに凌ぐ

臨床用のMRI装置は1.5〜3テスラの磁場を生み出す。これは地表の磁場のおよそ3万〜6万倍にあたる。鋼鉄の酸素ボンベを部屋の向こうまで吹き飛ばすほど強力で、だからこそスキャナーの近くでは金属が禁じられている。磁場は体内の水素原子を整列させ、そこから発せられるかすかな信号を読み取って精細な画像を作り上げる。
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