古い道具が静かに知っている八つのこと

DC·59 Deep Cuts
山は下げ振りの糸を傾けてしまう

山は下げ振りの糸を傾けてしまう

下げ振りは糸の先に錘を吊るし、地球の中心に向かって真の鉛直を示す。だが糸は重力に従うので、大きな山にはそれ自身の引力がある。1774年、スコットランドのシェハリオン実験で、測量士たちは糸が山の方へおよそ11.6秒角だけ横に引かれるのを測った。そのわずかな傾きから、彼らは地球全体の重さを量った。英語の『plumb』はラテン語の plumbum、すなわち鉛に由来し、錘はこの密度の高い金属で鋳られている。
水準器のガラスは、わざと曲げてある

水準器のガラスは、わざと曲げてある

水準器の中の小さな管はまっすぐに見えるが、実は曲がっていて、中央がふくらんだ樽形をしている。閉じ込められた気泡は周りの液体より軽いので、つねにその曲線のいちばん高い点へ浮かび上がる。その点が真ん中に来るのは、道具が本当に水平なときだけだ。傾ければ気泡は高いほうの端へ滑っていく。フランスの科学者メルキセデク・テヴノが、1661年2月より前にこの装置を記述している。
この管は、角を回った先でも水平を見つける

この管は、角を回った先でも水平を見つける

水を満たした透明なホースは、もっとも古い水準器のひとつで、目視の見通しにはいつだって勝つ。つながった管の中の水は、どれだけ離れていても、壁や角をどう回り込んでも、両方の開いた端でかならず同じ高さに落ち着く。原理は静水圧平衡、すなわち連通管の物理だ。レーザーも、照準線も、電池もいらない。ただ重力が両端で水面を平らに引くだけ。
逆に回せば、電気を生む

逆に回せば、電気を生む

アルキメデスのねじは、二千年以上にわたって水を汲み上げてきた。らせんを回せば、水はくぼみに一つずつすくわれて螺旋を登っていく。逆向きに回せば、それは発電機になる。落ちる水が羽根を押してねじを回し、軸を駆動して電力を生む。羽根はゆっくり動き、隙間も大きいので、魚は傷つかずに通り抜ける。現代のスクリュー水車は、低落差の流れで機械効率およそ80〜90パーセントに達する。
穴をあけたのと同じ錐が、火を熾した

穴をあけたのと同じ錐が、火を熾した

舞錐(まいぎり)は、もっとも古い回転工具のひとつだ。心棒に巻きつけた紐を小さな弓で前後にひくと、軸が両方向に高速で回る。硬い先端をつければ、木や石、骨、ラピスの玉にさえきれいな穴をあける。先を鈍らせて乾いた木に押しつければ、穴をあけたのと同じ摩擦が、今度は赤く光る熾火と火を生む。碧玉の刃をつけた舞錐は、現在のパキスタンのメヘルガルで、紀元前5千年紀から4千年紀にかけて使われていた。
あの螺旋は、削りかすを外へ吐き出すためにある

あの螺旋は、削りかすを外へ吐き出すためにある

鋼のドリル刃のねじれた溝は、削るためのものではない。逃がし道だ。実際に削るのは先端の刃だけで、螺旋の溝はスクリューコンベヤーのように働き、深まる穴から切りくずやかすを上へ運び出す。だから刃が詰まったり過熱したりしない。それ以前の平たいスペードドリルは、かすの行き場がなく、すぐに目詰まりした。スティーブン・モースが1863年にツイストドリルを特許化し、その形はそれ以来ほとんど変わっていない。
片方では噛み、もう片方では空回りする

片方では噛み、もう片方では空回りする

ラチェットのカチッという音は、一方通行の扉だ。頭部には歯のついた歯車とばね仕掛けの爪が収まっている。柄を一方へ押すと爪が歯をとらえてボルトを回し、戻すと爪は歯の上をただ滑り越えるので、工具を留め具から外さずに振り直せる。だから狭い場所でも短いストロークで作業できる。バーモントのJ.J.リチャードソンが、差し替え式ソケットを備えたこのラチェットレンチを1863年6月16日に特許化した。
昔のねじは、自分の穴を自分で開けられなかった

昔のねじは、自分の穴を自分で開けられなかった

現代の木ねじは、鋭いきり先を押し当てた瞬間に食いつく。だが初期の機械製のねじは、先が平らで鈍く、ねじ山も途中で止まっていたので、自分では決して切り込めなかった。まずきりで下穴をあけ、それからねじをねじ込む必要があった。同じピッチのねじ山を先端まで通した、自分で切り込む尖ったねじは、1846年のトマス・スローンの製造法から生まれた。
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