釘が知らない、木が知る八つのこと

DC·56 Deep Cuts
これらの寺は、釘を一本も使わずに建っている

これらの寺は、釘を一本も使わずに建っている

日本の伝統的な木工は、重い木材を切り口の形だけで組み合わせる。各部材にはかみ合う凸と凹が刻まれ、摩擦と建物自身の重みだけで固定される。釘もネジも接着剤もない。こうして1,300年以上前に建てられた世界最古の木造建築は、今も建ち続けている。しなる継ぎ手が、固い骨組みなら割れてしまう地震を受け流すからでもある。
この継ぎ手は、一方向には決して引き抜けない

この継ぎ手は、一方向には決して引き抜けない

蟻継ぎは、末広がりのくさび形のほぞを並べ、対になった溝に差し込んで二枚の板を組む。各ほぞは根元より先端のほうが幅広いため、継ぎ手が抵抗する向きには板を引き離せない。ほぞが抜ける前に木が裂けてしまうからだ。固定しているのは幾何学の形だけで、だからこそよく切られた蟻継ぎは、接着剤がほとんど、あるいは全く要らず、何世紀ももつ。
木は木目を横切って動き、決して縦には動かない

木は木目を横切って動き、決して縦には動かない

木は季節とともに呼吸をやめない。湿った空気で膨らみ、乾けば縮むが、その動きはほぼ横方向だけだ。板は木目を横切って広がったり狭まったりする一方、長さはほとんど変わらず、たいてい0.1パーセント未満にすぎない。さらに、年輪を横切る向きより年輪に沿う向きのほうが約二倍も動く。これを無視すれば天板は割れたり反ったりする。よい指物は、木が動く余地を残す。
蒸気は、硬い板をしなやかに変える

蒸気は、硬い板をしなやかに変える

木の繊維を結びつけている接着剤の一つがリグニンという天然の高分子で、熱を加えると柔らかくしなやかになる。板を熱い蒸気で満たすとリグニンがゆるみ、それまで硬かった木を型に沿って曲げられるようになる。冷えて乾くとリグニンは再び固まり、木は新しい形を永久に保つ。この技は、船の肋材から、あの古典的な曲げ木のカフェチェアまで、あらゆるものを生み出した。
濡れた木の栓は、船をいっそう固く締める

濡れた木の栓は、船をいっそう固く締める

ボルトが現れる前、船大工は船体の外板を骨組みに木栓で留めていた。穴を開けて打ち込む頑丈な木の栓だ。木材が海水を吸うと膨らみ、栓もともに膨らんで、ゆるむどころかますます固く食い込んだ。木の栓は、鉄の留め具のまわりに広がる「釘病」と呼ばれる腐食も避けられたので、きちんと木栓で留めた船体は、金属で留めたものより長もちした。
割った木は、挽いた木よりはるかに強い

割った木は、挽いた木よりはるかに強い

のこぎりは木目に関係なくまっすぐ切るので、その板は繊維が端からはみ出して走ることが多く、初めから弱点を抱えている。生木をくさびで割ると逆になる。割れ目が木目をたどり、どの繊維も端から端まで途切れずに通る。椅子職人はこうして材を割って取る。だからこそ、1700年代に手で割られた細い丸棒や脚が、今日でも日々の使用にびくともしない。
ずらした穴に通した栓が、継ぎ手を締め寄せる

ずらした穴に通した栓が、継ぎ手を締め寄せる

木組みでは、一方の梁のほぞがもう一方の溝に収まり、そこへ木の栓を打って留める。巧妙なのはここだ。ほぞを貫く穴は、溝を貫く穴よりわずかに肩寄りに開けられている。先細りの栓を両方に打ち込むと、ずれた穴を無理やり一直線にそろえ、継ぎ手を引き寄せてぎゅっと締め上げる。そして木が縮んでいくあいだも、何世紀にもわたって締まったままに保つ。
同じ重さなら、木は鋼を引っ張りで上回る

同じ重さなら、木は鋼を引っ張りで上回る

鋼は絶対値で見れば木よりはるかに強いが、密度もおよそ十七倍ある。体積ではなく重さで比べると、木目に沿った木が勝つ。木の細片は、構造用鋼の細片よりも一キログラムあたり大きな引張力に耐える。この静かな効率のよさこそ、鋼よりずっと前から木が船や航空機や橋を支えてきた理由であり、いま再び高層建築に戻りつつある理由でもある。
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