垂らしたばねを放すと、その下端は空中で静止する 長い金属ばねの上端を持ち、伸びて静止するまで待ってから手を放す。すると一瞬、下端の巻きはその場に浮かぶ。重力が下へ引く一方で、ばねの張力はなお上へ引き、両者が打ち消し合うのだ。崩れていく上端から圧縮波が伝わり、放されたことが下端に届くまでそれは続く。ある物理学者はこの浮遊を約0.3秒と測定した。重力が強いほど波も速く伝わるため、月でも木星でも同じ長さになる。
ばねの法則は、文字を入れ替えた言葉の中に隠されていた ロバート・フックは、ばねの力が引き伸ばした量に比例して増えることを発見したが、それをすぐに公表する気はなかった。1676年、彼は権利を主張しつつ競争相手を出し抜くため、文字を並べ替えたラテン語のアナグラム「ceiiinosssttuv」だけを発表した。2年後の1678年、彼はそれを解いて「ut tensio, sic vis」、すなわち「伸びに応じて力あり」と明かした。力は剛性と伸びの積に等しいというこの単純な法則は、今日作られるほぼすべてのばねの設計の土台であり続けている。
古代のカタパルトは、よじった毛髪をばねにして放たれた 鋼のばねがはるか以前、ギリシャやローマの技術者は、ねじり式カタパルトの動力に、きつくよじった動物の腱や毛髪の束を枠に巻きつけて使った。腕を後ろへ引くとこの束が絞った雑巾のようにねじれ、弾性エネルギーをため込み、それが投射腕を前方へ弾き出した。ウィトルウィウスらの著述家は、その弾力ゆえに人間の毛髪、とりわけ女性の髪を珍重し、縄はしなやかさを保つため油が塗られた。紀元前4世紀以降、こうした機械は石を300メートル以上も飛ばした。
巻かれた一本の帯ばねは、どこまで伸ばしても同じ力で引く たいていのばねは引き伸ばすほど強く引くが、定荷重ばねはその法則を破る。これはあらかじめ応力を加えたばね鋼の平たい帯を、内側の巻きに次の巻きが重なるようきつく巻いたものだ。帯を引き出すと、巻きから離れる部分の小さな曲がりだけが変化し、その曲率半径が一定のままなので、抵抗する力も一定になる。巻きの直径の約1.25倍ほどほどけた後は、最後までほぼ一定の引きを保つ。だからこそ巻尺やリールの動力になっている。
昆虫は跳躍の力を、ほぼ完璧なゴムに蓄えている 跳ぶ昆虫は、筋肉の速さだけに頼ってはいない。彼らは外骨格に組み込まれたゴムのようなタンパク質「レシリン」にエネルギーをためる。これは知られているなかで最も弾性に富む素材の一つだ。アワフキムシがゆっくり脚を緊張させると、硬いクチクラとレシリンの複合構造を引き絞った弓のようにしならせ、やがて掛け金を外す。レシリンはためたエネルギーをほぼ完璧に返し、毎秒約200回しならせても損失は5パーセント未満で、ほとんどの合成ゴムをはるかに上回る。だからこの昆虫は瞬きの間に飛び出せるのだ。
最も激しく飛び立つ跳躍者は400Gに達する 樹液を吸う体長わずか6ミリのアワフキムシは、これまでに測定されたなかで最も強力な跳躍者だ。2003年、ケンブリッジの生物学者が毎秒2,000コマで撮影したところ、硬いクチクラとレシリンのカタパルトをゆっくり引き絞り、それを猛烈な速さで解き放つ様子が捉えられた。離陸の瞬間、その小さな体には重力の約400倍の力がかかる。垂直に60センチ以上も跳び上がり、これは自然界の跳躍王の座を奪ったノミの倍の高さだ。
この甲虫は脚を使わず、ただ弾けて跳ぶ コメツキムシを仰向けにすると、はっきりとした「カチッ」という音とともに跳ね起き、脚をまったく使わずに体勢を立て直す。腹側の突起が縁に引っかかっている間に、筋肉が胸部の柔軟な蝶番にゆっくりと弾性エネルギーをためていく。掛け金が外れると、体は突如はじけて反り返り、甲虫を空中へ放り上げる。高速X線の研究によれば、この動作は重力の300倍以上に達し、そのすべてが昆虫自身の胴の中ほどに組み込まれたばねによるものだ。
アギトアリの大あごは10万Gで噛み閉じる アギトアリは巨大な大あごを大きく開いたまま、内部の掛け金で固定し、その間に閉口筋が大あごのクチクラへゆっくりと弾性エネルギーを巻き込んでいく。引き金の毛に何かが触れると掛け金が外れ、大あごはおよそ130マイクロ秒で噛み閉じる。その速さは時速230キロ近く、加速度は重力の約10万倍に達する。このアリは大あごを地面に打ちつけて自らを空中へ跳ね上げ、ばね仕掛けの一噛みで危険から逃れることさえできる。