ローマン・コンクリートは自らひび割れを治す 2000年前のローマン・コンクリートに見られる小さな白い塊は、長らく雑な混ぜ方の産物だと片付けられてきた。だが2023年、研究者たちはその逆だと示した。生石灰を使う「ホットミキシング」が残した反応性の石灰クラストだったのだ。ひびが入って水がしみ込むと、石灰が溶け出して炭酸カルシウムとして再結晶し、すき間を接着して塞ぐ。普通の現代コンクリートには到底ない、組み込み式の自己修復のしくみである。
海水がローマの突堤を強くする 現代の海洋用コンクリートは海水のなかで数十年で崩れていく。ローマの港湾構造物はその逆で、2000年かけて強さを増してきた。古代の突堤から採取したコアを調べた地質学者は、火山灰の混合物にしみ込む海水が、アルミナ質トバモライトやフィリップサイトといった希少な咬み合い鉱物を育て続けていることを突き止めた。この板状の結晶が何世紀もかけてマトリックスを編み上げる。私たちのコンクリートを壊す海が、彼らのコンクリートはひそかに強めていたのだ。
世界最大の無筋ドームは2000年前のもの ローマのパンテオンは、いまも地球上で最大の無筋コンクリートドームの記録を保持している。内部に鋼材を一切使わず、径43.3メートルを覆うのだ。ローマ人は重力を出し抜くため、コンクリートに段階をつけた。基部には1立方メートルあたり約2200キログラムの密な石灰華骨材を、頂部には約1350キログラムの軽い火山軽石を使った。上部を軽くしたことで応力が劇的に下がり、二千年近く立ち続けることができた。
コンクリートは乾くのではない、水を飲むのだ コンクリートが固まるのは、水が抜けるからではなく、水が閉じ込められるからだ。セメント粒子は水と化学反応を起こし(水和と呼ばれる過程)、咬み合うケイ酸カルシウム水和物の結晶を成長させて砂と石を結びつける。だからこそコンクリートは水中でも問題なく固まり養生でき、職人は何日もスラブを湿らせ続ける。早く乾かしすぎれば反応は止まる。空気中で乾かしたコンクリートは、ずっと湿らせ続けたものの半分ほどの強度しか出ない。
鉄筋が効くのは、幸運な偶然のおかげにすぎない 鉄筋コンクリートは、ひそかな幸運の上に成り立っている。鋼とコンクリートは、ともに摂氏1度あたり1000万分の10から12ほどと、ほぼ同じ割合で膨張・収縮するのだ。季節が暑さと寒さの間を揺れても、二つの素材は引き裂き合うことなく一緒に動き、両者の結びつきは保たれる。もし違う割合で伸び縮みする金属と組み合わせていたら、補強材は少しずつ剥がれ、複合材という発想そのものが崩れていただろう。
私たちは水に次いで、これを最も多く使っている コンクリートは、水に次いで地球上で最も多く消費される材料だ。人類は毎年およそ300億トンを流し込み、それを40億トンを超えるセメントが結びつけている。そのセメントを作るには窯で石灰石を焼く必要があり、人類が排出する二酸化炭素全体の7パーセント以上を占める。足元の灰色の物質は、その質量だけで見れば、私たちの種が作り出す最大級の存在なのだ。
眠れる細菌で自らを修復するコンクリートがある 技術者はコンクリートに生きた修復キットを仕込むことができる。休眠状態のバチルス菌の胞子を、栄養源とともに生コンクリートに混ぜ込み、内部に封じ込めるのだ。胞子は、からからに乾いた強アルカリ性の石のなかで何十年も生き延びられる。ひびが開いて水が入り込むと、胞子は目を覚まし、栄養を取り、炭酸カルシウム——ひびを自然に埋めるのと同じ石灰石——を分泌する。そして水が内部の鋼に達して腐食させる前に、すき間を塞いでしまう。
セメントは1,450℃の窯で生まれる コンクリートが柔らかな灰色になる前に、その結合材は炎のなかで鍛えられる。砕いた石灰石と粘土が、約1,450℃に熱せられた回転窯のなかを転がり落ちていく。混合物の一部が実際に溶けてしまうほどの高温だ。その熱で新しい鉱物——主にエーライトとビーライト——が結晶化し、クリンカーと呼ばれる硬い灰黒色の塊となって出てくる。これを細かい粉に挽いたものが、水と混ぜれば石のように固まるセメントになる。